スターバックス コーヒー ジャパン株式会社

スターバックス コーヒー ジャパン株式会社

ブランド体験・顧客体験を支えるテクノロジーチームとビジネスチームの密接な関係

  • Industry飲食
  • Company Size1000~4999名
  • Customer Since2018年

対談:スターバックス コーヒー ジャパン 荒木理江様 × プリズマティクス アドバイザー奥谷孝司

スターバックス コーヒー ジャパン株式会社は、エスプレッソを主体とする“シアトル系”スタイルのコーヒーストアチェーンです。2019年にレジに並ばず決済&受け取りできる「モバイルオーダー&ペイ」(以下、MOP)を導入するなど、リアル店舗とデジタルの垣根を越え、マルチプラットフォーム、オムニチャネルの施策を数多く実行されています。

クラスメソッドグループによる同社へのAWS支援は2014年4月から始まり、現在はプリズマティクス株式会社によるECとCRMを支援するためのAPIプラットフォーム「prismatix」のご利用にまで広がっています。

MOPでの「prismatix」のご利用イメージ

MOPでの「prismatix」のご利用イメージ

MOPを構成する共通機能を「prismatix」に集約、APIでフロントのアプリケーションが利用することにより、システムの拡張性と柔軟性を確保するアーキテクチャーとしています。
今回、スターバックスのテクノロジーを支えるカスタマーテクノロジー部 部長の荒木理江様と、当社エンゲージメント・コマース・アドバイザー奥谷孝司との対談が実現。

リアル店舗とeコマースを持つ小売業におけるオムニチャネルならではの悩み、システム部門とマーケ部門の思考の違いまで、デジタルマーケティングの最前線に立ち続けるお二人に、じっくりお話を伺いました。

コンシューマ向けテクノロジーチームが約10年前に発足

──今日はお集まりいただき、ありがとうございます。まずはお二人の自己紹介からお願いいたします。

奥谷:奥谷です。オイシックス・ラ・大地という、ネットで野菜を売る会社に所属していまして、管掌は基本的にコーポレートコミュニケーション。企業アライアンス関係を見たり、保育園事業や卸売事業を中心にオフラインビジネスをサポートしたりしています。オイシックスとしては少しずつ“リアルビジネス”が伸びてきているので、それを主に見ています。
あとは顧客時間という会社を立ち上げて、色んな会社さんのDX支援をしています。最近ご相談いただくことが多いのは、データをどうビジネスに活用するか、ですとか、D2C的な試みをしたいということで、その辺りの事業をさせていただいています。
プリズマティクスでは“エンゲージメント・コマース・アドバイザー”として、支援させていただいています。今日はよろしくお願いします。

荒木:スターバックス コーヒー ジャパン、スターバックステクノロジー本部、カスタマーテクノロジー部の荒木です。よろしくお願いします。

奥谷:「カスタマーテクノロジー」という部署があるんですね。それはフロントエンドの技術をやるから、ということですか?

インタビュー風景

荒木:弊社のテクノロジー本部は、会社全部のテクノロジーをすべて管轄しています。POSレジに代表されるような店舗の運営を直接支える分野、販売、給与、会計、人事など企業全体の運営を行う分野。この2つがチェーンストア運用のコアとなるのですが、弊社にはもう一つの柱として、コンシューマ系サービスを企画開発運用する分野があります。お客様にとって、デジタルがより身近になっていく中で、10年ぐらい前、わずか2~3人でサポートが始まりました。私はちょうどそのころにスターバックスに入社し、この分野を担当しています。

奥谷:なかなかフロントエンドのテクノロジーをちゃんと定義するってこと、無いですよね。Web事業部が作ったアプリなのに、何か問題があるとバックエンドシステムが怒られるというのが、よくあるパターン(笑)。でも、そういう部署があるからこそ、MOPのようなことができる、ということなんですね。

関係性のバランスを取りながら徐々にデジタル導入

──MOPの立ち上げについて、経緯を教えていただけますか。

荒木:MOPは5〜6年以上前から、アメリカや韓国で既に立ち上がっていたんです。それぞれのマーケットで非常に好評を得ていたということも分かっていましたので、早くそれを日本でも導入したかった。日本のビジネスチームとしては長年の夢でもありました。
ただ、色々なデータを見たところ、お客様との間にデジタルでの関係性ができあがっていない中でMOPだけを入れても、果たしてどこまで育てられるのか、という議論がありました。そこでまずリワードのプログラムを先行して導入しようということになりました。そしてリワードのサービスが立ち上がった3年前から「次はMOPだぞ」と、企画がようやく走り出したんです。

奥谷:デジタルって、なんでもできてしまうんですけど、お客様のアクセプタンスや店舗側のプレッシャーも含めて考えていくと「徐々にやる」というのはすごく大事だなと思いますね。僕も前職の良品計画で「MUJI passport」を作った時の初期インターフェースは、今とはだいぶ違いました。当時はアプリを店舗のレジで提示してもらうということが重要でしたので、提示画面をファーストビューにしていました。お客さんとの関係性ができてからは、「from MUJI」というコンテンツから始まっています。

荒木:飛び道具のように何か導入しても、1回でもサクセス(成功)ではなくフェイラー(失敗)が発生してしまうと、その時点でお客様は敬遠してしまうんですよね。店舗もそれは同じで、1回失敗したら店舗は自信がなくなってしまう。お客様、店舗、サポートセンター(本社)と、どうやって皆で良い関係性を築いていくかというのが、デジタルとしては一番求められているんだなということを感じています。

奥谷:2015年位から「モバイルショッパーマーケティング」というのが重要になってきたと言われてきているんですが、現代のショッパーを起点にする、つまり店舗も含めたアナログとデジタルの融合が大事になってきた、ということなんですね。お客様との関係、店舗が提供する顧客価値。その価値に寄与するデジタルテクノロジー。これらのバランスが大事だと思います。

“全員参加”のアジャイル開発で進めたMOPプロジェクト

──MOPは、キックオフして約6ヶ月で立ち上げたスピード開発でした。

インタビュー風景

荒木:「アジャイルのお作法に基づいてスピードアップして、チームがそれを体感できるようにプロジェクトを組んでほしい」と、プリズマティクスさんを含め、クラスメソッドグループ全体にお願いしました。チーム全員、初めてのやり方だったので新鮮だったと思います。「こうやって物事が決まっていくんだ」「こうやって作るんだ」って。
「開発は開発チームがやる」。そうではなく、社内エンジニア、マーケター、オペレーション設計、すべての関係者が一堂に会し、週に1回、2〜3時間かけて、スプリントのレビューをやっているところにベンダーさんにも同じように参加していただく。そんなスタイルのアジャイル開発を行いました。その伴走があってこその、短期間での立ち上げだったと思っています。

奥谷:プリズマティクスと一緒にやると、大変だけど学ぶことはありますよね。ただ、アジャイルって、こちらの「Will」がちゃんとないと、かなり難しいと思うんですよ。
特に「prismatix」は、オムニチャネルやヘッドレスコマースを志向していて、マイクロサービスもいっぱいあっていかようにでも使えてしまうんですよね。もちろん、使い方を悩んでいる企業様のご相談には、数多くの経験から事例をお伝えすることはできるのですが、「こういう感じで使いたい」と意志のある企業様の方が使いこなせているのではないかな、と思います。

荒木:本当にそうですよね。そこに自分たちの思いの強さが無ければ、きっと何も出てこないんじゃないかなと思います。

奥谷:今マーケティングでも「アジャイル化」ということが言われているんですよ。マーケターのアジャイル的な発想って、とかく「思いつき」に見られちゃいがちなんですけど(笑)お客さんの反応を見てPDCA回して、本当の意味でアジャイルにできるのか。これができるマーケターって、実はそんなにいないんですよね。

荒木:スターバックスではマーケターのチームもしっかり開発に入ってもらって、細かい文言まで全部見てくださいとリクエストし、担当者をアサインしています。社内システム部門とビジネス・オペレーション部門、双方が一緒にサービスを考える、という習慣を持っているのは、スターバックスの強いところなのかもしれませんね。そうなるのにも、結構時間はかかりましたが。
奥谷:オイシックスはECを中心としたシステムなのでやり易いんですが、店舗を中心としたシステムだと難しいことで、トレーニングが必要ですよね。社風になっているのはすごいですね。

荒木:そういう文化があると無いとでは、大きな違いになってきますよね。新しい取り組みに挑戦できる文化は一朝一夕では作れず、お客様達に、育てていただいてきたんだなぁ、と思います。

コロナ禍で要求される不確実性への柔軟さ

奥谷:今、このコロナ禍で顧客体験が変化する中、去年からMOPのオペレーションを既にやっていたというのは、店舗側も混乱が少なかったのではないですか。“withデジタル”になっていなかった多くの小売業やリアルビジネスって、結構右往左往したと思うんですけど、コロナ以前からお客様との関係性を考えていた会社はますます強くなるんじゃないかと考えています。そこにデジタル等の手段がいくつか散りばめられている会社は、生き残れそうな感じはしますね。

荒木:弊社の場合、お客様との関係性をどうやってデジタルでサポートするか、ということについて取り組む計画や方針は常にありましたので、コロナがあったから大きく変わった、というものは、実はないんです。ただ、こういう状況になってから、お客様の方が「デジタルを活用したい」というニーズがすごく強くなってきました。店舗のパートナーからも、お客様に安全に安心してご利用いただきたいという要望が強くなりました。
そうすると、顧客への新しい体験の実現に加え、後回しになっていた、安心・安全に利用できる環境整備、という要件も優先度があがってきます。コロナのようなことが起こればその組み換えはめまぐるしく、常に変わるのはとうぜんです。この状況をいかにストレス無く受け止めるか。不確実性への柔軟性というものが、すごく求められている感じがしますね。

奥谷:リクエストが来るのは、店舗やマーケからだけじゃないですよね?

荒木:あらゆる部門から相談があります。ベースとなる会員数は増加し、デジタル上で飛び交う取引件数も毎年飛躍的に伸びています。既存のサービスの延長以外にも、Uber Eatsとの提携でデリバリービジネスを強化する、などという案件もあります。
スターバックスのデジタルは、オンライン上で完結するものではなく、店舗とうまくつながって価値を発揮します。目先の企画だけでシステム実装を進めてしまうと、店舗のオペレーションは破綻してしまう可能性もあります。果たして、それがお客様のライフタイムバリューを考えた時に、継続するものなのか。どんな時間軸でどういう体験を、お客様やお店のパートナーに提供していかなくてはいけないのか。このようなビジネス視点がテクノロジー担当者にも求められるようになってきたと思います。

奥谷:「オムニチャネル」という言葉、最近あまり言わなくなりましたけど、研究上はすごく大事な言葉なんです。シームレスに、どこからカスタマージャーニーが始まってもうまくいくということ、そしてそのブランド体験を通して、いい意味でのロックイン効果が生まれること。「他のコーヒー屋さんもあるんだけど、ここがいい」という、スイッチングコストが自発的に上がった状態を「究極のオムニチャネル体験」と呼んでいます。
その為には、マーケターの知恵も大事ですけれど、やはりシステムでどうカバーするかが大事ですね。その時、店舗やオペレーションのことが置き去りにされがちなので、そこはリアルビジネスの場合、忘れてはならないところですよね。ITスタッフのビジネス視点てすごく大事ですが、実際にリアル店舗で「いらっしゃいませ」と言ったことがないスタッフももちろんいますし…御社の中ではどのように現場に目線を合わせるということをやってらっしゃるんですか?

インタビュー風景

荒木:難しいですね。そこはいつも悩みながらやっている感じがします。システム部門であれば、システムの専門家として最新の技術にも関心を持つ一方、店舗のオペレーションや企業のデータの流れも知っておかないといけない。そのうえで、どんな顧客体験が実現できそうか、マーケターに提案できなくてはならない。そのためには、自分の手でビジネスを立ち上げて、それがインフラになっていく様子を見たい、“文化”を立ち上げていきたい、というマインドを持つこと、が鍵になる気がします。

奥谷:それはオイシックスのシステムの人間にも通じるなと思うところがあります。「食にまつわる課題を、ビジネスの手法で解決をしていきたい」という我々の企業ポリシーがありますが、オイシックスはオンラインストアが唯一のお店と言っても過言ではないので、そこに対してビジネスマインドや顧客視点がないシステム提案はやはりダメですよね。

荒木:また苦労して開発をして世に出してみたものの、お客様の評価を得られなかった、ということは、やっぱりあるんです。そんなとき、「これではダメだったか、じゃ、次を考えよう」と切り替えられるかどうか。新しい方法を考え、行動に移れるか。システムを作っているのではなくビジネスを作っている、という意識が重要だと感じます。

奥谷:「成し遂げたい」というのが、単に「システム構築したい」ということではなくて、「ビジネスを、商売をちゃんとうまく稼働させたい」でなければいけない。──そういう視点で、プリズマティクスも、スターバックスさんから提案を求められてきたわけですね、これは大変だ(笑)。

伴走してくれるパートナーシップが組織を強くする

荒木:弊社はプリズマティクスさん以外にも多くのベンダーさんとお付き合いをさせていただいています。うちのチームがいわゆるコントローラーになって、いろんな開発ベンダーさんを繋ぐ役割をしているんですけれども、一緒に働くベンダーさんとは長くお付き合いをして、色々教えていただきたいと思っているんです。
多くの開発ベンダーさんは、弊社の要望に対して100点満点の提案書を出す、と想定していると思います。要望自体が100点満点で将来を見据えて整理されているわけではないので、もともと難しいのです。であれば、「一緒に手を動かしながら考えますよ」ということが重要だと考えています。「この要件どう思いますか」「どんな不確実性の高い要素がありそうですか」「一緒に進めていく上で何がネックになっていますか」などなど。発注者と受注者という関係ではなく、将来のゴールに向けてどう取り組んだらもっとも効果的なのか、技術的なこと以外でも、ざっくばらんにご相談をするようにしています。

奥谷:それは僕も顧客時間の仕事で心がけているところです。綺麗な資料を作る納品型の仕事ではなく、伴走型で評価いただかないと、一緒にクリエイトできない。綺麗な資料を作ると悦に入ってしまうんですけど(笑)、実際に動くかといったら、違いますので。伴走してくれるパートナーというのはすごく大事ですよね。

荒木:誰か1人スーパースターがいて、その人が全部をリードできるのであればそれは美しく効率的なやり方かもしれませんけど、それでは不確実性に対応したり、迅速にサービスを拡大する事はできないだろうと思っているんです。

奥谷:今の「優れた顧客体験」をファースト・プライオリティに置くと、結構複雑なパートナーシップになると思うんです。1社ではできなくて、色んな人達と関係性を作っていく。デジタル店舗を守るということは、広く様々なパートナーに支えられて成り立つ仕組みであることを前提にしておかないと、もう、無理だなって感じですよね。

「システムを守る」のではなく「顧客体験を守る」

インタビュー風景

奥谷:僕はマーケターですが、最近「守る」という言葉を使うようになってきているんです。マーケターもCMOもCTOもCIOも、本質的にはデジタル店舗を守ろうとしているんだと思うんですね。すれ違いがたまにコンフリクトを起こしてしまっていますが、オペレーションをどう綺麗に回していくかのシステムもあれば、お客さんに来ていただくためにデジタル使って集客したり。その辺がシームレスにならないとカスタマーサクセスにならないということですよね。
ですから「守りに入る」というよりは「俺が守る!」という…青春映画じゃないですけど(笑)でも、「守る」という言葉は同じだと思うんです。「俺が守る!」の背景には当然ですがテクノロジーが必要で、闇雲にマーケターやビジネスサイドが「あれもこれもやってね」と言ってしまうと、店舗もお客様も結果的に守られなくて、破綻してしまう。
そこで荒木さんに質問なんですが、CEOやトップって、「システムはできて当たり前」と考えて、わざわざ守ってくれる人ってなかなかいないと思うんです。オイシックスの場合はECがベースのビジネスなので、システムとビジネスが一体となっているところがあるんですが、スターバックスさんはどうなんでしょうか? やはり「お店」が一番大事ですか?

荒木:実は、MOPって、毎月必ずステアリングコミッティがあるんですよ。

奥谷:特定のタッチポイントに対して、ステコミがあるんですか?

荒木:MOPは、我々としては「新規のタッチポイント」ではなくて、プラットフォーム、「お店の延長」として捉えているんですよね。バーチャルなお店とリアルのお店をどう繋いでいくかというのは、経営戦略の中でとても重要なことなので、毎月1度必ずステコミがあるということですね。さまざまなセクションの責任者も出席し、この1ヶ月でMOPで起こったこと、課題となっていること、対応・対策など。今だと全国展開を進めているところなのでその導入進捗を報告し、認知度をあげていくプロモーションなどについても承認を得ています。

奥谷:ということは、システムが、ということではなくて、経営陣も「重要な顧客体験」としてそこにはちゃんと目を配るということですよね。そういう発想はすごく大事ですよね。

荒木:テクノロジーが、システムが、という観点ではなくて、何が1番重要な顧客体験で、ビジネスをどこに進めるのか。それが分かれば「それならこちらの優先度を上げよう」「このテクノロジーを採用しよう」というような判断ができます。

奥谷:経営者がデジタルのプロというのはなかなかいないと思いますけど、重要なデジタルタッチポイントを店舗と擬似化して「ここは重要な店舗だ」という風に認識するのはとても重要なことだと思います。
僕は前職(良品計画)で店舗、MUJI passport、Webという3つの柱で毎週KPIを出す、というようなことを5年位前まではやっていました。どういうイシューを決算資料に飾るかということでもあるんですが、MOPが重要イシューであるということは広報にとってなども大事なことでしょうし、そういう意識っていうのは経営陣に持ってもらいたいところではありますよね。

荒木:ここだけはキッチリしてくれ、というのが分かっていると、現場も動きやすいですからね。

奥谷:一気に全体を見て分かっちゃう人は良いんですけどね。オイシックスの高島とかはそういう人なんで、わかっちゃう。なかなかそういう人はいない。だからといってシステムは押し並べて「あと、よろしくね」とされると、どんどん粒度が粗くなってしまう。経営陣にもその粒度を分かってもらうために、重要だと思うところを独自の視点を持って見続けてもらえるのは、システム部門への応援になりますよね。

非連続性の中で運用・保守・変化していくことの難しさ

奥谷:最近「ヘッドレスコマース」という言葉をよく聞きますが、どこからでもお客さんが入ってこられる、というのは、顧客体験としては用意するべきだと思うんですけど、それをやればやるほどシステムはチェックすることが増えるわけなんで、大変ですよね。

荒木:昔ながらの運用監視や保守という考え方が、一切なくなってしまいましたね。今まではアラートのメールが飛んでそれを見て何があったのか調べ、障害がありましたとメールして…で成り立っていました。MOPのように複数のサービスを組み合わせているサービスは、全体を俯瞰してはじめて、どこにボトルネックがありこの現象が起こっている、ということがわかります。サービスの拡大を横目に、コレは後々まずいことになる、とずっとあせりを感じていたので、最近、システムの運用者が全体俯瞰するのに役立つツールを導入しました。

奥谷:そういうのって、役に立ちます? 僕、あんまりいい経験ないんだよなぁ。漏れませんか、何か必ず。

荒木:漏れますね。でも、1システム・サービスの障害だけに着眼していたら気が付かないことも、ツールを介して俯瞰で見る習慣をつけることで、短時間で判断できるようになりました。また定常的にデータを追いかけることで、事故を未然に防ぐ活動も行っています。科学的なサイトリライアビリティエンジニアリングに挑戦することこそが、結果的にお客様の体験や店舗の運営を守ることにつながると信じています。

奥谷:デジタルで店を守るって、私は軽く言ってますけど、重たいことですよね。

荒木:弊社のお客様は季節ごとのプロモーションを毎回とても楽しみにしてくださっている方が本当に多いのです。特に大きな季節の変わり目のプロモーションには、お店もそうですが、デジタルプラットフォーム上にもたくさんのアクセスが集中します。このため、毎年「どんな最悪のケースが考えられるか」というリスク分析を必ず行います。毎年たくさんのサービスをリリースしているので、例年通りの対策をとればいい、というのは一度もありません。

奥谷:デジタルが広がると、非連続な体験が増えてくるんで、その結果読みきれないことが増えて、その辺は現代の小売りにとっては悩ましいところではありますよね。

荒木:弊社に限らず、現代の小売業のコンシューマ向けデジタルサービスは、パターンのない、前例のないものばかり、これを導入したらおしまい、という世界ではありません。新しいアプリは毎年どんどん出てきて、それを組み合わせて価値を訴求するのが効率的、エコシステムと言われる所以です。だから、他社さんにもベンダーさんにも、「教えてください!」「一緒に考えてください!」というのも大事ですよね。 できれば世の中のサービスがAPIでオープン化され、その組み合わせで簡単に独自サービスが作れるといいのに、と思うこともあります。

奥谷:プリズマティクスに作ってもらいましょう(笑)。

ーそれでは最後に、これからのMOPの展望とプリズマティクスへの要望がありましたら、教えていただけますか。

荒木:MOPは今のものをベースとしながら、「店舗の延長」として、新しい顧客体験を生んでいく重要なプラットフォームになっていくと思います。システムは1回入れたらおしまい、後は保守・運用…となるのではなく、それなりのライフサイクルがあり、常に変えていかなくてはならない。導入したところが我々のスタート。これからやりたい事が沢山ありすぎて、どこから手を付けようかと悩んでいるところです。マーケターからのリクエストだけでなく、どう全体を守っていくのかという視点でのリクエストもあります。
スターバックスの店舗は、定期的な改装がちゃんと長いスパンの計画の中に組まれているんです。それと同じように、お客様の体験も、そしてテクノロジーやアーキテクチャーもリフレッシュしていかないといけない。今後を見据えたシステムの入れ替えやリフレッシュに、今後も、プリズマティクスさんには伴走していただきたいなと思っています。

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